Daily Archives

One Article

おしらせ

新刊情報 宮崎智之『あの人は、なぜあなたをモヤモヤさせるのか 完全版』(幻冬舎plus+)

Posted by platon-and-plankton on

あの人は、なぜあなたをモヤモヤさせるのか 完全版 (幻冬舎plus+)

「プラトンとプランクトン」略してぷらぷらのお兄さん的存在、フリーライター宮崎智之さんの新刊が9月に出ました! わーお! 恋愛版、仕事版、悪女版などいろいろありましたが、全部読みたかったのでさっそくkindleで完全版を買って読んでみました。

宮崎さんの文章はとにかく誰にとってもわかりやすく、読みやすく書かれていて、まじめなんだけどユーモアにあふれ、ついついクスクス笑ってしまう。なんかモヤモヤさせられる、自分が理解できない異質な対象を、単に排除したりしようとするのではなくて、上から見下すのでもなく、正面からとことん冷静に見つめていて、そういう歩み寄ろうとする対峙の姿勢にはたくさん学ばされるところがあります。

「大雪でも定時に出社する人々」「駅のホームで抱き合い、海藻のように揺れているカップルについて」といった記事には、自分の他にも気になっているひとがいたんだなあ〜、と深く共感。「女子を悩ます「彼氏面男子」」や「サークルクラッシャー」には、ほんとにほんとにほんとにほんとにこういうやついる!!!と止めどない怒りが溢れ、「男はなぜ、女におごらなくてはいけないのか?」という問題にはちょっとだけ耳が痛くなる。ごめん。美容すらしていないが、でもおごってほしい。

「嫌いな上司からSNSで友達申請」だとか、「iPhoneから送信」署名のメールに対してイラつくというのには、世間から隠居しているわたしには縁がなかったのでびっくり。他にも仕事編の、「休憩時間にノンアルはあり?なし?」とか、「スーツ姿にリュックはありか」とか、「ビジネスでマスク着用は非常識か?」には、外の世界にはいろんな悩み事があるんだなー、と朝から酒を飲みながら感心しました。めんどくさいっすね。みんな会社やめちゃえ。

ときどき挟み込まれるエッセイ(「前歯がないブルース」「救急車に乗った僕はアゴが少し伸びていた」)はそのタイトルセンスもさることながら、中身も爆笑。宮崎さんのユーモアが自由に羽ばたいてかがやいてます。そんな笑いが絶えない中で、シリアスな「ライブチャットで服を脱ぐ東大卒の女性」や「子どもの泣き声にイラつく人こそ、マナー違反ではないか?」という記事には深く考えさせられ、なんだか悲しくなってしまった。

全体を通してキャッチーだけど、分析がするどく、多面的で深く、宮崎さんの普段のネーミング力はここからきてるんだなあと納得しました。最近だと、「告白ハラスメント」(告ハラ)が話題になっていたみたいで、炎上もしていたらしいけど、「告白=愛・青春!」みたいに思い込んでストーカーと化した連中の被害に悩む人や、告白されることだとか愛情を押し付けられるということが暴力以外のなにものでもない状況に悩む人も少なからずいて、そういうことを人に相談しても「自慢?」としか思ってもらえず、今まで声をもたなかった立場が、新しい「名付け」によって救われるのはとてもありがたい。……ことなんじゃないでしょうか? 言葉が強いので誤解を招き易い名前かもしれないけど、印象だけじゃなくて、その名前が生まれるにいたった経緯をみていったら、賛成派と反対派のやりとりがもっと有意義になるんじゃないかと思うし、そういう人を救う名前が生み出されていったらいいなと思います。

***

「プラトンとプランクトン4号 特集:脱皮小説」では、宮崎さんの、吉田健一をめぐる紀行文「或る田舎町の魅力に導かれて」と、村田沙耶香の論考「複雑な現実を単純化する生き方」を掲載しています。

2017年11月刊行予定「プラトンとプランクトン5号 特集:親密さのかたち」では、吉田健一や中原中也に触れながら、宮崎さん的「親密さのかたち」論を展開している「世界に親しみを持つということ」という論考が読めます。

他にも5号では、フリーライター宮崎智之さんと、詩人(笑)深沢レナ、恋バナユニット桃山商事の清田代表との鼎談「離婚者のつどい」という激アツ企画も! 妊娠リミットから夫のATM問題、別居婚から『逃げ恥』まで、昨今の結婚・離婚事情を細かに解析。清田代表に訊く「聴く男」になるための秘訣。そして最後には「離婚文学ベスト10」もあり。離婚者率の高いぷらぷら独自の企画です。

今をきらめくフリーライターお二人のせきららな恋愛話を読んでときに泣きときに笑い、結婚したい人も、離婚したい人も、そもそも「結婚」ってものに意味を感じられない人も、ぜひ読んで結婚制度について一緒に考えましょう!

(文責 深沢レナ)